熊本地震(4.15)

2017/11/25

余震が続く中、朝5時過ぎ、おそるおそるマンションへ戻る。

散乱した部屋を見て、それでもまだどこか他人事のように感じる。

昨日食べるはずだった夕ご飯の肉じゃがの入った鍋が、

キッチンの上で奇跡的に生き残っている。

一睡もできず、体はくたくた。そしてお腹はぺこぺこ。

嬉しいことに私の住む地区は電気もガスも止まっていない。

冷たくなったご飯と、肉じゃがを旦那が温め、夕飯だったものが朝御飯になる。

私はそんなに特別料理が得意なわけじゃない。

それなのに、とてもとてもおいしく感じた。

余震が続いてはいるものの、恐怖と共に睡魔が襲う。

車で少し眠りにつけた旦那が

「起きているから少しベッドで寝ておいで」と言ってくれる。

太陽が昇っていると、なぜだか安心する。

 

正午頃、目が覚めると、旦那が「仕事場に行ってくる」と言った。

正直行ってほしくなんかなかった。社長が行っているから仕方ないけど、、

こんな時でも、日本人は真面目だなぁと、複雑ながら感心する。

一人になると当然心細くなり、ひたすら家を掃除しながら起きていた。

 

午後七時、旦那が帰宅。ホッとする。交互にシャワーに入る。

もうこないよね。でっかいのきたんだもん。余震も小さいし。

昨夜の地震発生時刻21時26分を大幅に超えてきた頃、そう思えてくる。

それでもなかなか寝付けず、リビングで旦那はゲーム、私はパソコンを見ていた。

 

日付は変わり、16日午前1時を過ぎた。

もうそろそろ寝ようかと二人で話していた。

その時だった。揺れを感じる。

また余震だー、、、

その瞬間だった。とても強い揺れが襲い始める。

目の前にいた旦那がソファーから転がり消える。

と同時に真っ暗になる。停電したのだ。

強い揺れにどうすることもできず、暗闇の中でまた家中痛い音が鳴り響く。

その場でふんばるしかできない私は、また愛犬の名前を呼ぶことしかできない。

幸運な事に膝元に愛犬が到着。真っ暗だから見えないが、確かに手元にきてくれた。

旦那はもう一匹をすかさずキャッチしていたようだ。

 

揺れがおさまった、、、、

携帯はどこ、真っ暗で何も見えない、、、

あった!!アプリの懐中電灯を起動。

あらかじめ用意できていたリュックを背負い、犬をゲージにいれ、

今回は、すぐさま玄関をでる。

この時、やけに旦那と息をピッタリあわせて「よし、うん、大丈夫」と

言いまくっていた。

エレベーターは使えないため、またあの階段を降り続けなければならないのか、、

でも今日は一人じゃない。旦那が一緒だ。

よし、あと8階、あと5階、、、と声をだしながら階段を降り続ける。

階段が崩壊するのではないかと不安でしょうがない。

無事一階に到着。そのまま駐車場にむかい、車に飛び乗る。

街は真っ暗だ。気味が悪い。

残念な事に、行き場所を決めていなかった。

昨日はマンション真横の空き地パーキングだったが、

今回はそこでは足りないと感じ、錯乱状態で広い場所を求めて車を走らせる。

夜中に地震があった事もあり、まだ道路に車は少なく、渋滞もない。

ただ道路に歩いて出ている人は、ちらほら見かけた。

車を運転することも恐怖を感じ始め、とりあえずコンビニの広い駐車場に入る。

ここにはもうけっこう人が集まっていた。

 

待つことを知らず、揺れが何度も襲う。

駐車場の地面に座っていると、ズンと押し上げるような縦揺れ。

車が倒れてしまうんじゃないかと思うほどの横揺れ。

車のすぐ横のコンクリートに、ひび割れが走る。

安全な場所なんて果たしてあるのだろうか。

すでに生きた心地はしなかった。

 

周りに人がたくさんいる中、聞こえてきた声。

若い女の子が一人、まったくの他人であろう隣の人に

「一人で逃げてきたんです、怖いので一緒にいてもいいですか?」

と言っていた。

聞いていて泣きそうになった。みんなどれだけの恐怖を感じているんだろう。

どれだけ心細いんだろう。

こんな時、人間はどれほど無力なのだろうか。

 

また今夜も車で寝る場所を確保しなければならない。

意を決して、思いついた広い場所まで移動する事にした。

余震が続く中、車を走らせ、自分のマンションの前を通る。

自分の部屋の電気がついているのが見えた。

電気が復活している、、、

そんな中、二次災害の恐怖を考え出す旦那と私。

ブレーカーを落としに戻るべきなのか。ガスの栓も閉めたい。

しばらく家には帰れないだろう。毛布も持ってきていない。

悩んでいる今も、時より揺れが襲う。どうしたらいいのだろうか。

そして、旦那が口を開いた。

一人で戻ってブレーカーを切り、毛布をもってくると。

犬と私は車で待ち、すぐに動けるようにしておくようにと。

こんな時、二、三階に住んでいればそんなに怖くないのかも。

だけど私たちの階はもっとうんと上だ。

その間にまた大きい地震がきたら、、、

二度と旦那が戻れなかったら、、

思い返せばこの時離れるたかが10分たらずが、一番恐怖だったかもしれない。

もうそれは恥ずかしいドラマの最期の言葉のような台詞をかわし、

(あとで二人で思い出して大爆笑)家の明かりが消えるのを外からひたすら待ち続けた。

ものすごく長く感じた。

消えた!あとは階段を下りるだけ!神様!旦那を返してください!、、、

 

ツイていた。この間揺れは一度もなかったのだ。

無事に旦那が車に戻る。

車を走らせると、またもや携帯が揺れを教えるために鳴りまくる。

この音は、何回聞いても怖い。

目的とする場所に行くまで、橋を二回通らないといけない。

それもまた恐怖だった。

 

無事目的地に着くが、駐車場の入り口にチェーンがかかっていて入り方が分からない。

しかし中には、何台も車が止まっているのが分かる。

そこにいる人に声をかけてみると「今チェーンあげますね」と

見ず知らずの私たちの車を入れる手伝いをしてくれた。

中にはたくさんの車がすでに避難していて、みんな動揺しているようだった。

私はここで初めて、尿意を我慢できず、恥ずかしながら外で用を足す事になる。

 

前日に引き続き、時間も夜中をまわっていて疲労はマックスにはずなのに

車の中で毛布を広げ寝ようとするも、なかなか鼓動が落ち着かず寝付けない。

カーナビでニュースを見る。ガソリンが心配でエンジンを切る。

この繰り返しとなった。

 

朝を迎えた。

朝6時。この時の朝焼けをあたしは忘れない。真っ暗闇からの解放がこんなにも

安堵をもたらすなんて。

余震は続いている。

 

今となっては根も葉もない話が、SNS上で飛び交っていた。

「ライオンが動物園からでてきている」

「もう一度震度7以上の地震がこなければ今回の地震は収束しない」

「未来人が今回の地震を予言していた」

精神状態がやばいと、こんなばかげた話も信じるものだ。

自分に未来はあるのか。これからどうなってしまうのか。

みんなはどう過ごしているんだろうか。

一人きりの人はどれだけ孤独なんだろうか。

 

食料も水もなくなっている。

ここにとどまるべきなのか、移動するべきなのか。

「市内より南のほうはお店も開いているし落ち着いているようだ」

この言葉で、南へ移動する決心をする。

愛犬たちもとてつもないストレスを抱えているだろう。

 

大渋滞の中、南へ車を走らせる。

途中、中には入れないスーパーマーケットが外で物を売っていた。

すぐさま並び、ダーズで2リットルの水と、カセットコンロ、懐中電灯、

ラジオ、思いつく限りのものを買った。

ガソリンスタンドもあって、ガソリンをいれることができた。

コンビニも、品切れに近いもの開いていてくれた。

カップラーメンを買ってお湯を借り、駐車場で食べた。

駐車場だけど犬も散歩できた。水もご飯も食べてくれた。

この時とても楽しそうだった。よかった。

 

ニュースでは今夜は雷雨。風も強いという。

広いモールの駐車場で一夜を過ごすことを決める。

仮設トイレも設置してくれていた。

ただただ何をするわけでもなく、時間が過ぎるのを待つ。

夜になると、雨風がすごく車が揺れる。

地震なのか強風なのかもう分からなかった。

この日さすがに疲れがたまっていたのだろう。

車の中で数時間眠りにつくことができた。

早く朝がきますように。

 

朝日が昇る。

車を降り、2リットル水で顔を洗い、歯をみがく。

あぁ、お風呂に入りたい。

断水はけっこーきつい。

犬たちもしっかりご飯を食べ、少し散歩する。

 

おなかがすいた。

近くを徘徊する。

セブンイレブンがあいていた。

サンドイッチやお弁当は売り切れ。

みんな食べるために必死だった。

なぜかここで靴下を買う。旦那と笑いながら臭いねなんていいながら着替える。

日が昇ると少し安心して元気になる。

 

今日はどうしようか。

そんな時、親から電話。

「こっちは被害がでなかったから、どうか実家に戻ってきて欲しい」

旦那と離れたくなかった。

旦那は帰らないといった。旦那の母はこっちで避難所にいる。

みんなで帰りたかった。

でももうどこが安全とか、明日はどこに地震がくるのかとか

もう冷静な判断さえできなかった。

車で生活して三日目。

一度ぐちゃぐちゃのままのマンションに戻り、掃除と荷造りをして

とりあえずみんなで実家にむかった。

三日目のお風呂は死ぬほど感動した。

本当に生き返ったのだ。

それからすぐ旦那は市内に戻っていった。

私は犬と実家に残り、休むことにした。

二時間離れた実家は、とても穏やかで、あたりまえじゃないと分かった事が

あたりまえに出来ていた。

水もでる。トイレもできる。お風呂も入れる。ご飯も食べれる。

こんな毎日が当たり前じゃなかったことを痛感する。

兄の奥さんと子供も避難してきていた。

余震がくるたび、スマホの緊急メールが鳴り響く。

とても怖い思いをしたのだろう。

音が鳴るたびさっきまで笑っていた子供が顔をこわばらせ、じーっと大人を見つめる。

「誰からメール?地震のメール?」

かわいそくて仕方なかった。

 

夜が大好きだった私。この時から夜が大嫌いになる。

それは今でも変わらないものとなった。

 

犬に異変が出始める。

どこかが痛いのか触れるだけでギャンギャンと泣き叫ぶ。

すぐ病院につれていき、とりあえずの薬をもらう。

持病のヘルニアだろうか。

帰ってくるときには歩くのがままならなくなっていた。

地震のせいもあるのだろうか。

できることならかわってあげたかった。

みていられなかった。

早くかかりつけの動物病院にいきたい。

 

そんなきっかけでやはり市内に戻ることを決意する。

まだまだ地震はとまらない。

旦那と、家族と一緒に乗り越えたかったのだ。

そこにいてくれたほうが安心するという旦那の言葉を聞かず

戦場に戻る。

 

帰ってすぐ信頼する病院へ。

ここでもらったお薬で、犬はまた歩けるようになる。

本当によかった。

 

もう二匹ともおじいちゃん。

一緒にがんばってくれて本当にありがとう。

 

旦那さん、私たちを守ってくれてありがとう。

 

家族のみんな、手を差し伸べてくれてありがとう。

 

負けないよ。

毎日は当たり前じゃないことで溢れている。